◆ 水石の歴史 ◆ 鑑賞石の種類について ◆ 水石の範囲について
 

水石趣味の歴史は古く約900年程まえに中国に起源があるとされ、当初は文房清玩趣味に始まると言われているように文人による発想であった事がわかります。日本に類似の趣味が入ってきたのは鎌倉時代であるとされ、文献に見られるのも約700年程まえからで歴史の重さを感じます。

日本の場合は文人ではなく時の権力者や特権階級の人達による流行が起源となったらしいが、その頃の楽しみ方はもちろん今とはだいぶ異なります。特権階級の楽しみから比較的庶民に近い人達に伝わり、現代に近い飾り方、楽しみ方に変わってきたのは、大体江戸時代からでです。それとても盆栽と同じように、あるいは従属的な添えとして扱われてきました。

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本当に現代に近い飾りは何時頃からか、となると人により判断基準が異なりますが、凡そは大正時代であり、現代風となると更に時は下がって昭和も30年代となります。東京オリンピック以降は経済の飛躍的な発展により、一億総中流と言われる時期を迎えた庶民が今まで特権階級の人達の楽しみを次々と自分のものにしていきました。そのひとつに愛石趣味もあり、その爆発的な流行が昭和40年の前後に起こりました。愛石趣味の月刊誌の発行、水盤作家も増え,あちこちで展示会ともなると100個単位の石が並びました。

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異常な数年はあっけなく過ぎ、金儲け、投機目的の俄か趣味者が去り、長い間低迷の時期が続きました。しかしここ数年来は真に石を愛する人達により探石ブームと云われるほどになり以前とは違った傾向が見えて頼もしく感じられます。ただ高齢社会の到来による後継者問題がどこの会でも問題となってきています。今後はこの素晴らしい趣味を如何にして次代に引き継いで行くかが問われます。しかし、考えようによっては年寄り趣味と言われてきた趣味ならば、逆に高齢社会に適した趣味だという逆転の発想もあります。

私どものグループはこの点についても真剣に取り組んでゆくつもりです。皆様からのいろいろなご意見が拝聴できれば幸甚です。

    下野自然水石会 会長



 
a
 山水景情石   b 紋様、姿石   c 抽象石、[心象石]   d 美石    e その他
以上の種類に分類することが出来る。

a の山水景情石のみが水盤を使用しての飾りと、台座に載せての飾りをする。他の種類は全て台座のみの飾りとなる。
山水景情石は字のとおりで、其の形が自然の風景を連想出来るような姿をしているもの、
例 山の形、湖水の様子、果てしなく広がる平原、海岸や磯を連想する形、海や川にある岩を連想するもの、半島や岬の形、段丘、etc

千仏石  岩山の景
  雄勝石  岩潟の景


b
の紋様、姿石はこれも字のとおりで、石の面に紋様の現れたもの、例えば花、鳥、月、12支、文字、人物、等がある。姿石も同じく其の形が例えば、観音様、12支、茅屋、人物、等の姿に似ているものである。

渡良瀬川桜石 下仁田菊花石 荒川梅花石 古木の梅
左より桜の花菊の花梅の花と云い、この3石を三大花紋石と呼ぶ。


c
の抽象石、最近は心象石と称することがある、このジャンルが一番難解で文字どおり抽象的な物体、または心象を表すものであり、個人の考え次第で如何様にも断定出来る。
abが形似を源とするならば此方は心似の表現と云えよう。

神居古潭石 小口川石 南三陸海岸石


d の美石は一番ポピュラーなジャンルで初心者からベテランまで、大多数の人達から好まれている。したがって今後は女性にも人気のある鑑賞石です。色の美しさと色の配色等も見ていて楽しいものです。


e 他には最近鉱物的なもので美石にも近いものなども見かけるようになってきた。 ヒスイのように宝石の類も見られ、此れからに期待したい。
  糸水晶、 蛍石、 ヒスイ、 メノウ、 etc

 

 



一言で水石と言ってもいろいろなジャンルがあり、何処までを水石と呼称するのかは人それぞれによって考え方が異なり、はっきりとした線引きは出来ない。狭義に断定すれば、水盤を使用し、底に清浄な砂を敷き、水をかけて乾くまでの過程の落ち着いた風情、風雅を楽しむものと云えようか、それとても時代を経て変化した肌の侘しさ、寂しさを感じさせる風雅な石には、かえって水を掛ける事により石肌に兆した微妙な観賞価値を大きく損なうこともある。

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では水盤を使用しない石についてはどうか、同じ山水景情石でも大きすぎたり、小さすぎて水盤の使用に問題のあるもの、底が悪く水盤に収まらないもの、それと石により水盤に飾って違和感のあるもの、硬度、質感が極めて水に馴染まないもの、等は台座飾りとするが水盤でも台座でも山水景情石は水石として今までも此れからも変わらない筈である。

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次に紋様、姿石、抽象―心象石、美石、その他については山水景情を基本とする水石とは一線を画するものであり、水石の呼称は馴染まない。但しこのジャンルの石も水石の名称に違和感があるだけで、根底にある石の鑑賞価値は全く同等であるのは論を待たない。鄙びた風情の茅屋石、手を合わせたくなる様な観音石、花鳥風月の紋様石、どれをとっても純日本的な情緒を持った、山水景情石に勝るとも劣らないものであり、これから愛石人口の増加に一番期待のもてる種類である。

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以上簡単に説明しましたが其の楽しみ方は人それぞれであり、居ながらにして山水景の中に身を置くもよし、掌上の石に万景をみるもよし、机上に観音、茅屋を配したり、また雅やかな菊花や梅花の花見もできる、万物の縮小を我が物としてその想いに浸るとき、愛石趣味の醍醐味を改めて感じる筈である。

願わくは何時までも健康で、自然の恵みを慈しみつつ、好きな石との出会いを永遠に続けたいと思う、幾千年の時を経た石肌に想いを抱きつつ。

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